次世代の経営リーダー育成への取り組み ~東北発・教育ベンチャー企業「株式会社アビリティ」

株式会社アビリティは、「東北発の教育ベンチャー企業」として、福島市と仙台市を拠点に、幼児・小学生・中学生・高校生向けの学習塾を展開しています。一般的な学習塾とは異なり、「社会に出てから生かせるマインドとスキルを伸ばすこと」を重視した顧客体験やサービスを提供しています。近年では、「次世代型教育プラットフォームカンパニー」への進化を目指し、顧客数の拡大、増収増益を続けています。

当社とは、2017年から、次世代の経営リーダー育成を目的とする「Ability Innovation Project(通称AIP)」を推進してきました。AIPは、同社の社員が主体的に、「経営課題の解決」や「新たな価値創造」につながる”リアルなプロジェクト”を実践しながら、経営リーダーとしてのマインドセットやスキルの向上を図っていく取り組みです。

このAIPの目的・狙い、具体的な取り組みや成果などについて、株式会社アビリティ 代表取締役 佐藤朋幸様にインタビューをさせていただきました。

Q.どのような目的で「Ability Innovation Project」を始めたのか?

当初は、「教室長をはじめとする幹部社員の研修」を目的としていた。学習塾の先生というのは、毎日、子供たちと向き合っているが、それと引き換えに、社外の大人との関わりが少なく、どうしても閉鎖的な職場環境になってしまいがち。そのため、当社の社員たちが、社外・業界外のプロフェッショナルと関わり、刺激を受け、成長につなげられるような機会と環境を創れないかと考えていた。そんなときに、インタープレジデントの新田さんと出会った。

インタープレジデントは、当社の幹部社員たちが、「経営課題の解決」、「イノベーション創造」などを目的とする”リアルなプロジェクト”を実践しながら、「社内変革」と「経営リーダーや次世代リーダーの育成」を同時に推進していくことをハンズオン(伴走型)で支援するというコンセプトで、とても共感した。当社の幹部社員たちが、社外のプロフェッショナルと関わりながら、様々な経営レベルのプロジェクトを推進していくことで、大きな刺激を受け、新たなナレッジを学び、経営リーダーとして成長するきっかけにして欲しいと考え、インタープレジデントと共に、AIPをスタートした。

Q.AIPには、どのような社員が参加したのか?

AIPは、大きく4つのフェーズに分けて実施され、目的や参加対象者を適宜変更しながら進化していった。「第1フェーズ」では、幹部社員(教室長)が参加し、全社レベルの経営課題、および、各部門(教室)レベルの課題を解決していくプロジェクトを行った。「第2フェーズ」では、次世代リーダーの成長を目的とし、サブリーダー社員(副教室長)にまで参加対象を広げた。「第3フェーズ」では、全社的な底上げを目的とし、参加対象を全社員へと拡大し、教室ごと、テーマごとのチームに分かれてプロジェクトを推進した。「第4フェーズ」では、自主的にAIPへの参加を希望する社員、自らの成長に向けて自己投資したい社員に限定した。

2017年に第1フェーズを開始してから、2022年に第4フェーズを完了するまで5年以上にわたって、インタープレジデントと共にAIPへの取り組みを行った。現在は、AIPとしての取り組みは一旦終了したが、AIPで経験してきたこと、学んだことを生かして、各部門・各チームが、主体的、自立的に課題解決を推進できるような組織へと進化している。

Q.AIPから、どのようなプロジェクト・成果が生まれたか?

一番初めに取り組んだプロジェクトは、「アビリティ・フィロソフィー」の開発と組織への浸透だ。当時のアビリティでは、「教室運営に関わるノウハウやメソッドが属人的に保有され、全社員に共有されていない」という課題を抱えていた。

この課題を解決するにあたり、新田さんからは、「アビリティの理念や価値観、教室運営のポリシーやメソッドをしっかりと言語化・形式知化し、それを「アビリティ・フィロソフィー」としてまとめ、全社員で共有してはどうか?」という提案をいただいた。当社が、組織的なレベルアップを図るうえで絶対に必要だと感じたので、幹部社員が中心となり、「アビリティ・フィロソフィー開発プロジェクト」がスタートした。

「アビリティ・フィロソフィー」を策定する過程で、「アビリティのミッションやビジョンは?」、「アビリティ独自の価値は何か?」、「顧客は、アビリティに何を求めているのか?」、「アビリティは、どのような顧客体験を提供するのか?」、「そのために、当社の社員は、どのようなマインドとスキルを持つ必要があるのか?」などを、幹部社員が時間をかけて何度もすり合わせし、言語化していった。

また、開発した「アビリティ・フィロソフィー」を、組織全体に浸透させるために、全社の経営会議でフィロソフィーを基に、各部門の課題やその解決方法を話し合った。また、事あるごとに、フィロソフィーに立ち返り、当社の社員として持つべきマインドセットや果たすべき役割などを確認し、アビリティの理念やバリュー、メソッドなどを少しずつ組織全体に浸透させていった。その結果、社員一人ひとりのアクションが標準化され、組織としてのサービス力向上、生産性の向上などにつながった。

Q.社員による主体的なプロジェクト実践は、どう広がっていったか?

これ以外にも、様々なプロジェクト、成果が生まれた。例えば、「日々の業務報告の質が低く、課題の解決につながっていない」という課題に対しては、世界的なコンサルティング会社で一般的に使われている「Fact(事実)⇒Message(洞察・分析)⇒Action(行動)」というフレームワークを、新田さんから教えていただき、全ての業務報告をこのフレームワークに則って行うように刷新した。

当社では、これを「FMA日報」と呼んでおり、その導入前とは比較にならないほど、業務報告や情報共有のレベルは高まった。結果、「どの部門で、どのような課題を抱えていて、それを解決するためにどのように解決を図り、どんな成果を上げているのか?」などが、デイリーベースで見える化するようになった。それにより、属人化していた社内のナレッジやスキルが形式知化され、経営者として、全社的な経営課題や取り組みをリアルタイムに把握する上で、とても大きな価値があったと考えている。

他にも、部門(教室)ごとに、「顧客創造に向けたマーケティング」、「新規プロダクトやサービスの企画・開発」といったプロジェクトが次々と立ち上がっていった。また、全社的な経営課題を解決すべく、「人材採用」、「人材開発」、「総務・IT」、「教室移転」などのチームも立ち上がり、部門横断的なプロジェクトも進められた。また、社員が、よりアビリティらしい働き方ができるように、「人事制度(評価制度・報酬制度)の刷新」にも取り組んだ。

このように、あらゆる部門や階層の社員がAIPに参画し、リアルなプロジェクトを実践していく中で、一人ひとりの主体性、自立性は高まり、経営リーダー、次世代リーダーとしてのマインドやスキルが、少しずつ向上していったと考えている。

Q.AIPにおけるインタープレジデントの価値は?

当時のインタープレジデントは、「経営者の右腕としての価値創造」を理念としていた。「インタープレジデントが、経営者の右腕となり、次世代リーダーの育成を担う。その結果、私は経営者として優先すべき業務にもっと集中できる」という提案は、とても魅力的で価値があると感じていた。

これで私は経営者として少しは楽になれると考えていたが(笑)、実は、AIPを通して一番学ばせてもらった、成長させてもらったのは、経営者である私自身だと感じている。以前の私は、「社員に説明しなくても分かるだろう。結果が伴っていれば良いだろう」と考えていたが、その当時と比べると、ロジカルに物事を考え、再現性のある課題解決ができるようになり、会社全体の動かし方が上手くなったのではないか。

当社の社員たちも、経営課題の解決に取り組む難しさを感じながらも、「自分たちがやらなければいけない」という意識が徐々に高まり、全社員が主体的にチャレンジしていくようなカルチャーが醸成されていった。当初考えていた「外部の模範的なプロフェッショナルと共に、プロジェクトを実践する中で、新たなナレッジを学び、社員一人ひとりの成長につなげたい」という狙いは、達成できたと思う。

Q.5年以上に渡って実施したAIPは、次世代リーダー社員や組織全体にどのような変化・成長をもたらしたか?

繰り返しにはなるが、「座学中心ではなく、社員が主体となって、実際のプロジェクトをとにかく動かす。経営者がやるような業務に、社員がチャレンジできる」というのが、AIPの最大の価値だと思う。こうしたプロジェクト実践を積み上げていくことで、社員一人ひとりのマインドセットが変わり、自主性や自立性が高まり、課題解決スキルなどが鍛えられた。

例えば、ある幹部社員(教室長)は、以前は、何事も無難に進めていくタイプだったが、AIPでの経験を経て、新たな価値創造に挑戦し、様々な社内変革をもたらせるようになった。自己成長のボトルネックになっていた課題から脱却できたように感じる。

ある副教室長も、新卒入社1年目からAIPに参画し、確実な成長を遂げている。とにかくアウトプットの数が凄まじい。次々と新しい提案を上げてくるし、常に2~3つのプロジェクトを同時並行で進めている。「経営リーダーとして成長・活躍したい」という意欲も高まっている。

人材開発部と高校部を兼務している別のメンバーも、自ら率先して、「大学生スタッフの戦力化」などのプロジェクトに取り組んでいる。リーダーとして、大学生チームをマネジメントしていく上で、AIPで学んだ「プロジェクトマネジメント」、「ファシリテーション」などのスキルが生かされているように思う。

経営者として、このような社員の成長を見れるようになったのは、とても幸せなこと。今後も、全ての社員が飽くなき成長を追求してほしい。この中から、私の後継者になれるような次世代の経営者が育ち、東北発の教育ベンチャー企業として、日本の教育に新たなインパクトを生み出せるような企業へと進化していくことを目指したい。

―株式会社アビリティの会社概要―

【会社名】株式会社アビリティ
【業種】教育(幼児・小学生・中学生・高校生向けの学習塾)
【所在地】福島県福島市(本社・教室)、宮城県仙台市(教室)
【WEBサイト】https://www.ability-f.com/

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